Hug me!!!

スコール×リノア

「すこーるー」

自身を呼ぶ声が聞こえ、雑誌に向けていた視線を上げてみたが、声の主が視界に入らない。何処に居るのだと、首を左右に回そうと思った刹那、首に腕が絡んだ。 自分の腕よりも何倍も細い腕が、力強く自分を抱きしめている。その腕を引っ張り、”彼女”の体を自身の正面へと持ってくる。
彼女は一瞬、きょとんとした顔をしたが、直ぐにまた抱き着いてきた。一体、どうしたのかと疑問に思いながらも、彼女の柔らかい髪を撫でる。

「どうした、リノア。何かあったのか?」
「ううん。何もないよ」

そう言いながらもぎゅうぎゅうと強く抱きしめる。リノアにとっては精一杯の力なのだろうけど、痛くもなんとも思わない。ただ、彼女から伝わる温もりだけが感じられる。 彼女の背中に腕を回し、自分も強く抱きしめる。

時々、彼女は理由もなく自身に触れてくる。このように、いきなり抱き着いてきたり、両手を広げて、抱き着くのを要求してきたりする。それは、彼女の出生にも関係あるのだろう。 幼くして母を亡くし、父は仕事につきっきり。成長して、レジスタンスに入っていても、彼女はお姫様扱い。”人”と接する事が極端に少なかった彼女は、今までの反動なのか、 べったりと”触れてくる”。ラグナロク内では吃驚したが、今ではそれにすっかり慣れてしまった。
彼女が”触れる”のを要求するならば、自分はそれに応えたい。あまり触られるのは好きではないが、彼女だけは特別だ。

「あのね、リノアさんは、スコール君が大好きなんです」
「………知ってる」
「スコール君もリノアさんの事が大好きなんだよね?」

顔を上げて、じっと見つめてくる。
女という生き物は、時には言葉、時には行動を求めてくる。以前は厄介以外の何物でもないと思っていた。…でも、今はそう思わない。彼女だけは、リノアだけは、 やはり自身に特別な人だからだ。
抱きしめてる腕をほどき、彼女の頬を両手で包む。

「勿論だ」

そう言いながら、キスを落とした。
顔を離すと彼女は、はにかんだ笑顔を見せた。えへへと笑いながら、また抱き着いてきた。

「リノアさん、すっごく嬉しいから3割増しでハグハグしてあげる」
「そりゃどうも」

頬をすりすりと当てながら抱き着いてくる。まるで動物みたいだなと思いながら、もう一度力強く抱きしめた。





END