Clap log1

ジタン×ガーネット
スコール×リノア

珍しく彼が本を読んでいるから、思わずじっと見つめてしまう。青色の瞳の先には、何が映ってるのだろう。
いつもいつも、彼の目線は前を向いていた。どんなに悲しい事があっても、切ない事が起こっても、へこたれそうになった時も…その目のおかげで、ずっと助けてもらっていた。 だから、気になって仕方ない。彼はいつも何を思い、何を感じながら、何を見てるのだろう。
「ダガー…そんなに見つめないでくれよ」
「えっあっ…ごめんなさい…!」
「いやいや別に良いんだけどさ」
ジタンは読んでいた本にしおりを挟み、近くにあった机に置く。そして、私の方へと近寄ってきた。
「なぁダガー、何で俺の事を見てたんだ?」
「えーっと…」
ニコニコと笑顔を見せながら、近寄ってくる。それに比例して、私も目線を逸らす。恥ずかしくもなんともない理由だから話しても別に話しても無問題だから良いのだけど、改めて 話すとなると、何故か恥ずかしく思えてきた。気づくと、彼と私の距離は0に近かった。
「教えてくれよー」
彼の端整な顔立ちが目の前にあって、心臓が早鐘の様に鳴る。私が押しに弱いのを知っていて、わざとそうしているのだ。
なんて、性格の悪い人!
そう思いながらも、ガーネットは渋々開口した。
「ジタンは…いつも、何を見てるのかなって思って…」
「…へ?」
彼は素っ頓狂な声を上げた。きっと、予想していたものと違ったからだろう。
「だから、ジタンって、いつも”前”を見てるでしょ?だから…その…」
上手く言葉にできなくて、伝えたい事を伝えられない。口がどもってしまって、あーだとか、うーだとか、言葉になってない言葉を発してしまう。そんな私を見て、ジタンは私が何を 伝えたいのか分かったのか、そうかそうかーと納得してる。
「俺はな、いつだって、ダガーを見てるよ」
「…え?」
今度は私が、素っ頓狂な声を上げた。…何故なら、予想していた答えと全く違ってたから。
「ダガーを見てるから、”前”を見れるんだ」
ジタンの科白の所為で、無意識に頬が赤くなる。全く、この人は人を照れさせるのが得意らしい。
だけれど、心の内は嬉しさで満ちていた。

(見ている先*ジタンとガーネット)


***


休日の昼下がり。スコールの部屋へと遊びに来たリノアはベッドの上でくつろいでいた。何故なら、スコールにかまってもらおうと遊びに来たと言うのに当の本人は、SeeDの仕事が 終わってないらしく、机とにらめっこしていた。もう少しで終わるらしく、そこら辺で適当に暇をつぶしてろと言われたのは、つい先ほどの事。
スコールの部屋に置いてある自身の雑誌をぺらぺらと読んでいると、ある見出しが目に入った。
”恋人に言われたい!きゅんとくる台詞特集”
彼氏がいる自身にとっては、気になる特集だ。雑誌を食い入るように見てると、そこには見てるこちらが蕩けてしまいそうな台詞ばかりが載っている。その中の一部には、スコールに 言われた台詞もあり、その時の事を思い出してしまって、1人頬を赤くしてしまう。
だが、そのページを見る度に、ふと、ある事に気付いた。
「ねー…スコールってさ…」
「何だよ」
「んー…」
ごろんと寝返りをうつ。
もしかしなくとも、私、失礼な事を言おうとしてるのかもしれない……。
森のフクロウに居た時から、偶に非常識な事を言ってしまって、反感を買ってしまう事が多かった。その時は、相手が何で怒るか分からなかったけど、後々思い返してみると、確かに 失礼な事を自分が言ってしまったのが分かる。それらの反省を生かし、…やっぱり言うのを辞めよう。
何でもないよ、と言おうした刹那、つい先ほどまで、机にいた筈の人物がベッドの脇へと来ていた。つまり彼は、今、自身の隣に座っている。
「言いたい事があるなら、言えよ」
「…スコール、怒らない?」
「場合による」
もー!と言いながら、起き上がると、予想外にスコールと私の距離が近くて、吃驚する。
スコールは真顔で、じっと私の顔を見つめてくる。こうなったら逆らえない。もう喧嘩する覚悟で言うしかないか。半ば諦めながら、口を開いた。
「………スコールって、子供っぽくないよね」
「は?」
「だから、言うこと言うことが、大人ぽいなって、思って」
目を瞑りながら、恐る恐る言ってみると反応が返ってこない。どうして?と思い、目を開けてみると、何ともいえない表情をしているスコールが目に入った。
「悪かったな。これでも、少しは気にしてるんだよ」
「老けて見える事も?」
「…リノア」
「あはは、ごめんごめん!」
どうやら、そこまで怒ってないらしい。その事に対してほっとしていると、いまだにむすっとしてる表情をしてるスコールが目の前にいて、思わず笑ってしまう。
年相応に見えない彼だけど、こんな時の彼はとても可愛らしく見え、母性がくすぐられる。
「スコール可愛い」
ぽんぽんと彼の黒い髪を撫でると、彼の表情が少し和らいだ。そんな彼を見ていると、まだまだ彼は子供なんだなぁと実感できる。いつもの彼も好きだけど、こういう彼も好きだなと 改めて思った休日の午後だった。

(年相応の、彼*スコールとリノア)






(2011/08/20〜2013/03/01)