大好きな薔薇園へと2人で赴く。
お母様が大好きだった薔薇の花。幼い頃から慣れ親しんだ花だから、1番好きな花と言っても過言でもない。赤色・桃色・白色とさまざまな色がある、この薔薇園はアレクサンドリア
一素敵な薔薇園だと思う。決して大きくはないけれど、薔薇たちが隙間なく埋められているから大きく感じる。
私の両手にもその花が抱えられている。今日は、お母様が天国へと旅立った日。本来ならば、見合った花ではないけれど、お母様に捧げる花はこの花以外思い浮かばない。
彼は、私の後ろを遅れて歩いてくる。いつもおちゃらけている彼だけど、時と場所はちゃんと考えてるみたい(こう言ったら失礼だけど)。
「…ダガーはここが大好きだよな」
「えぇ。幼い頃からお城を抜け出しては、ここへ遊びに来てたわ」
花束を軽く抱きしめ、幼き頃を思い出す。
色々な事をいっぺんに強制されてた幼き頃の私は、頻繁にお城を抜け出していた。と言っても、城下町には行けないから(城下町に行くにはボートに乗らなくてはいけないから)、
いつも行先はこの薔薇園だった。いつも行っていた所為で、すぐに見つかっていたけれど。…それでも、ここは何度来ても飽きない場所だと思う。
そうこうしてる内に、目的地へと辿り着いた。朝早い所為もあって、まだ何も置かれていなかった。
抱えている花束に顔を埋め、匂いをかぐ。今年の薔薇も良い香りがする。お母様も天国で、きっと満足されるでしょう。 そっと、お花を置いて、お母様にお祈りを捧げる。遅れて、
ジタンも私の隣に座って、同じようにお祈りをする。
数分経った後、2人して同時に立ち上がる。母が眠る先を見つめてると、ジタンも同じ先を見つめ、口を開けた。
「俺は………やっぱり、ブラネがやった事は許せないんだ」
「………」
今まで、ずっとお互い避けてきた話題をジタンがふってきた。
イーファの樹で別れる前からずっと心に引っかかっていた話題だった。お互いにそうだと思うし、簡単に話せる事ではないと思う。むしろ、この場所でしか話せないことだと思う。
両手をきゅっと弱く、でも強く握る。
「俺、子供(ガキ)だからさ…割り切れないんだ。ブラネが…戦争なんておこさなければ、ブルメシア、クレイラ、リンドブルムの被害は無かったと思うし」
「…そう思うのが普通だと思うわ」
お母様がやった事は確かに許されることではないと思う。客観的に見れば、誰もがそう思う。私もお母様に辞めてほしくて、旅だったから。きっとお母様は、アレクサンドリアでは
愛されてるけれど、世界的に見れば、悪女という扱いを受けるだろう。何年、何十年か先の書物には、―――。
ジタンの気持ちもとてもよく分かる。彼の実際の故郷はテラだけれど、本当の意味で故郷はリンドブルムだから。…彼はあの時、どんな気持ちで見つめていたのだろう。きっと、
複雑な気持ちに違いない。それでも、彼は普通通りの態度をしていた。その時、ジタンはなんて強い人なのだろうと思ったのを覚えてる。
しかし、どんな事を言われてたとしても、ブラネ・ラザ・アレクサンドロス16世は私にとっては”母”なのだ。私はお母様を誇りに思っているし、お母様を愛してる。
「でもさ、ダガーにとっては、お母さんなんだよな」
「ジタン…」
ジタンの方へと顔を向けると、彼はなんとも言えない表情をしていた。
「過去の事をあれこれと言ったって、変わらないし、俺、もうこの事について言うのはこれで最後にする」
― これ以上、ダガーも俺も苦しみたくないしな…、
刹那、彼は私の手をぎゅっと握った。
彼の優しさに、涙が頬をつたった。
「ありがと、ありがとう、ジタン」
「だからと言って、これから先、ここに来ないって事じゃないからな!?ちゃんと、毎年来るからな、ここに。ダガーと一緒に」
「うん…うん…!」
そのまま手をつないで、来た道を戻る。来た時とは逆に、今度は私がジタンの後ろを歩いている。
潤った瞳で空を仰ぐと、優しい色合いが瞳に映った。
END